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「ここだな、日本一うまいラーメン屋というのは。どんなもんだか食通である俺が確かめてやるか。」
意気揚々と入口の前に立つ彼は、勇ましくも頼もしかった。
「たのもー!!」
「はいよー。」
「(なんて覇気の無い返事をしやがるんだ。接客業だろ!!)まぁいいやラーメンを作ってくれ!!」
「はいよー。」
親父はふふくそうに厨房に入り、麺をゆではじめた。その手つきはゴッドハンドの異名を持つにふさわしかった。
「やるな親父。今までラーメンを数百杯食べた俺が見れば、どれほどの職人かすぐわかるぜ!もはや貴方はラーメン神だ!」
ラーメン神はスープ作りにとりかかろうとしていた。
「む、スープのだしは何からとっているのですか!?」
「あ、これ?なんだろ、海老か蟹?だと思うよ。」
「さ、さすが!こんな一般人には秘伝の味は秘密というわけか!それならばこの舌で味わうしかないようだな。」
「はい、お待ち!ラーメンだ!」
「きやがったなこのラーメンめっ…おまえは俺に食われるのだ!!」
「お客さん、ギョウザはどうします?」
「そんなものは俺には無用だ。むしろラーメンの味がわからなくなり、だいなしにしてしまう悪魔ではないか!いらんいらんぞ!」
「へ、へい。」
親父はギョウザを焼き始めていたが、すぐに片付けた。たぶん頼むであろうと予測していたのが裏目に出た。
「さて…いた!!だきます!!」
割り箸を豪快に割り、彼はラーメンを食べる体勢にはいった。
「このツヤ…この弾力…光り輝くこのスープ…うまいに違いない。ではっ!!」
ガラガラ!
入口の戸を開ける音がした。そこにはラーメン屋っぽい服装に身をつつんだ男が立っていた。
「まーた勝手にラーメン作っただかゲンさーん!!駄目だって言ってるだべにー!」
「いやー、この人が作れっていうんでついつい…。」
「(何ッ!!まさか…)何言ってるんですか?この方のラーメンはおいしいと…ぐはっ!!マズい!!」
「ほーら駄目だべ?」
「こ、この方はラーメン神のはずだーーーー!!」
彼の中で新キャラクターであるラーメン神がつくられ、それはそれはにこやかな顔で笑っていたそうだ。
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