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そうだ。
そういや俺は鳥だった。
俺は気高い鷹だ。
両翼が風を切る。
新宿の高層ビルを縫い駆ける風になる。
上昇気流だ!
突風が身体を包み込み、仰角80度、ぐんと空に吸い込まれる。
勢いは更に増す。
頬を切る風が痛い。
既に雲は目下にあった。
真昼の陽射しが目に染みる。
大気圏へ突入した。
身体が焼ける様だ。だが屈するまい、俺は気高い鷹なんだ。
身体がふわりと浮かんだ。
ここは宇宙。
そうだ。
そういや俺は宇宙を統べる惑星―――の冒険家タクヤだった!
総督の命ではるばる銀河の彼方からこの惑星の調査にやって来たんだった!
クルリと振り向く。
目の前の惑星は青々と輝き俺を待ち受けている!
心臓の鼓動が宇宙空間にこだました。
手元のモニターに目をやる。
「『チキュウ』ジョウショウキリュウニチュウイ」
「構うもんか!」
宇宙船は胸の高鳴りに似たエンジン音を響かせ、チキュウへと飛び込んでいった。
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