十五夜~フィフティーンナイト~

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私はまだ理解していなかった どうして自分はここにいるのだろう? 自分はさっきまで別の場所にいたと思うけれど…… 気付いたら、ほんとにふと気付けばここに向かっていたのだ けれど疑わしく思う気持ちは微塵もない まるで自分がここにいるのが当然のような感覚 ただ、それが不思議だと思うだけ 辺りには知った顔がいくらかあったけれど、話しかける気にはならなかった 皆、誰一人として会話を交わす者などいない まず、ルールを知らなければ…… 脳のどこかをふと掠めた言葉 誰だって、自分のことに精一杯なのだ 一人、また一人とその場を離れ歩き始めた いつまでもここにいてはいけない―― とうにこのスタート地点を通り越した者など山程いるのだから 既に遥か彼方先まで歩んでいる者など、数えきれない程いるのだから 私も気だるさに逆らい重い足を進め始めた 頭上には 『19825人→15423人』 と書かれた看板があった それがここを通り過ぎた数なのか、それとも離脱した数なのか、私たちにわかりはしないけれど
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