5人が本棚に入れています
本棚に追加
目覚ましは窓の外に飛び出し、数十メートル先の道路に落ち、憐れその身を散らした。
「ははは! どうだ!」
「バーカ」
男は、寝起き特有の声で言い放った。れいんは首を回して後ろを見て、
「雄一、起きたのか!」
と大きな声で言った。
「朝からうるせえなあ……」
雄一と呼ばれた男は、大欠伸を一つした後に言う。
「…れいん。お前、今のは駄目だろ」
「なんでだよ! あたしは安眠を妨害する陰険なあいつを黙らせてやったんだよ!」
「ありゃ必要悪だろが」
「必要悪?」
「嫌だけど、なくちゃならないもの。あーあー、どうすんだよ。また新しいの買わなきゃ」
「買う必要ないぞ」
「お前が起こす? 例の“一日一善”でか?」
「そう」
誇らしげな顔で貧相な胸を突き出すれいん。
「…いや、やっぱ買う」
「いいって!」
「お前の一日一善は、もっと有効に使いたい。というわけで……」
「わけで?」
「…コーラ買って来い」
雄一はれいんの手を握った。れいんの手には百円玉が二枚落とされた。
最初のコメントを投稿しよう!