まっくらな朝から

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「このさんぷるえーからういるすのてきしゅつにせいこうした」 そう、白い男たちは言った。 この言葉の意味を、此(コレ)は知らない。 この不気味な場所に来て、どれくらい叫んだろうか。 引き裂かれ、剥ぎとられ、突き刺され、切り落とされ、すり減らされ、流し込まされ、 でも不思議と痛みはなく、それが逆に気持ち悪く、眠ることさえできなかった。 どれだけ時が過ぎたろうか。 光も射さないこの部屋は、「ういるす」がとれてから、部屋がすっきりしていた。 「…ーさんからのでんごんだ、ぶじつぎのだんかいへうつったらしい」 「それじぁああとは……」 白い男達は何やら話し込んでいた。 そして、こちらを一斉に見つめた。 ああ、とうとう此も棄てられるのか。 目覚めから最悪の日々、それもようやく終わるというのに、 此は、死は怖い、死は怖い、と泣いた。 どうも腕に液体を流し込まれてから、うまいこと力が出ない。 必死にもがこうとも、思うように動けない。 ただただ、人を恨み叫ぶ事しか、此には赦されていなかった。 するとこの部屋に知らない黒い男が入って来た。 黒い男は白い男たちを怒鳴り、部屋から追い出して、此を悲しい眼で見た。 白い男達が手袋をして触った此を、黒い男は何の躊躇もなく触れ、撫でた。 この男は違うんだと安心して、 此は久しく眠った。  
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