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まだ足も踏み入れてない雪のような肌に、二本の鮮やかな赤色が描かれる。
「私…ずっと黙ってたけど……、本当は嫌なんだから、リカちゃんが傷つくの、もう見たくないんだから!!」
さきほどまでざわついていた広間はいつの間にか静まり、ヘレナの声が一層と響く。
傷ついた左手を男に差し出しながら、必死に怒った顔をするが、反対のカッターを持つ手がブルブルと震えている…それが彼女の心境を物語っていた。
「…ご…めん……ごめん、ごめんなさい、ごめんなさい…」
自分の罪、彼女を傷つけた罪、リカと呼ばれた男の瞳から、大粒の涙がポロポロとこぼれだす。
ただただ「ごめんなさい」と謝り続ける彼が、ヘレナには幼い子供に見えた。
どうしてだろう?今までずっと怖れていた彼が、今日は一段と愛しい。
(そうか、リカちゃんは……)
彼は、酷い言葉を放つ度、自分も傷つけていたんだ。
とても不器用なだけなんだ。
(今まで、怖がったりしてごめんね…)
自然とヘレナの瞳にも涙が溢れる。
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