心の傷痕

4/4
前へ
/10ページ
次へ
カランッと、カッターの落ちる音が響いた。 子供のように泣き崩れるリカを、ヘレナはゆっくりと抱き締める。 こんなにも背丈が違うのに、小さく感じる彼の背中……今まで気付かなかった首の絞め跡……こんなにも自分を追い詰めていたの? 何も気付いてあげられなくて、ただただ怖れていた自分が情けなくて……。 「私こそ……ごめんねぇ、気付いてあげらんなくて…ごめんね……」 何が悲しくて大人ふたり一緒に、公共の場でわんわん泣いているのか…、道行く子供はふたりを見ては指をさして笑うだろう。 それでもふたりは泣き続けた。 その声が、ふたりの距離を少しずつ縮めている気がした。     「それでさぁー、もうリカちゃんって可愛いんだよぉ~!」 「はいはい、もうあんたの不気味なのろけ話は聞き飽きたわよ…。」 あれからしばらくしての事、ヘレナは友達に毎日のようにリカとののろけ話を繰り広げていた。 「でも、あんた本当元気になったよねぇ…あん時はゲッソリだったのにさ。」 「うん~、まぁ、お互いちゃんと分かったからねぇ~♪」 「はは、何それー。」 「えへへ、何でしょ~?♪」 笑顔の可愛い彼女の左薬指が、キラリと光った。  -END-  
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加