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カランッと、カッターの落ちる音が響いた。
子供のように泣き崩れるリカを、ヘレナはゆっくりと抱き締める。
こんなにも背丈が違うのに、小さく感じる彼の背中……今まで気付かなかった首の絞め跡……こんなにも自分を追い詰めていたの?
何も気付いてあげられなくて、ただただ怖れていた自分が情けなくて……。
「私こそ……ごめんねぇ、気付いてあげらんなくて…ごめんね……」
何が悲しくて大人ふたり一緒に、公共の場でわんわん泣いているのか…、道行く子供はふたりを見ては指をさして笑うだろう。
それでもふたりは泣き続けた。
その声が、ふたりの距離を少しずつ縮めている気がした。
「それでさぁー、もうリカちゃんって可愛いんだよぉ~!」
「はいはい、もうあんたの不気味なのろけ話は聞き飽きたわよ…。」
あれからしばらくしての事、ヘレナは友達に毎日のようにリカとののろけ話を繰り広げていた。
「でも、あんた本当元気になったよねぇ…あん時はゲッソリだったのにさ。」
「うん~、まぁ、お互いちゃんと分かったからねぇ~♪」
「はは、何それー。」
「えへへ、何でしょ~?♪」
笑顔の可愛い彼女の左薬指が、キラリと光った。
-END-
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