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泣いていたよ。 廃ビルのむき出しのコンクリートの
隙間から。
中で、以前は人と…よばれていた
ガラクタが
泣いてたよ。
血を流して 泣いていた。
ここから 手を伸ばしたら…
届くかな?届くかな?
好奇心なんて 捨てたはずなのに…
ひとめも気にせず 手を隙間に
入れる勇気も…
線路に寝転がった あの日以来
捨てたはずだ。
こっちを見てる…
みんな見てる。
ただ、街を歩く中。ふいに歩みを止めただけなのに…
こんなにも視線は痛い。異体。
笑い声は 世界が自分をさげすむ道具。
あぁ… 痛い痛い。
異体な自分。
そんな自分は… でも手を伸ばす。
掴む。 …君を。
君は やはり泣いていたね。
自分も 何故か涙が止まらなくて…
この感情が何かなんて 解らないけど…
君はまだ… 息をしていた。
まだ… 生きていた。
ガラクタだと思っていた君は 綺麗に笑った。
おかえりなさい。と
心のネジの外れた君が言う。
…ただいま。と
心のネジの外れた僕が言う。
こんな おかしい僕ら…
なのに…
なぜだろう…。
この瞬間 心臓が熱くなって 血が全身にいきわたる錯覚を覚える。
僕らは確かに…
廃ビルの中…
息をして…
生きていた。
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