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ずっと居たいとすら思い始めてきて、動きたくないんだ。
でも、それは出来ないんだよな。
俺は仕事でここに居て、帰らなければならなくて、この子の……兄ちゃんでもないんだ。
長く居続ければ更に帰りづらくなる。
俺は、ぐっと力を入れて立ち上がり、こう言った。
「俺は、もう帰らなくちゃいけないんだ」
「うん、だってトナカイさんが可哀相だもんね!」
え? 違うだろ?
俺はわかってるんだぜ、ホントは寂しいんだろ?
そんな時はわがまま言っても良いんだ……。
その時の俺はあたふたしていたんだろうな。
だから、また笑うんだよ。
俺まで暖かくなる様な表情と、声で。
「寂しくないの?」
「大丈夫! サンタさんとお喋り出来たし!」
そうか、そうなんだよな。
もうこの子にはこれが当たり前なんだ。
俺がいくら心配……いやこれは押し売り。
自分が嫌だから、押し付けているだけ。
この子にはこの子なりの楽しみ、幸せがある。
帰ろう。
俺はここに居ちゃ駄目、SANTAなんだよ。
あやふやだった俺の心も決まった。
部屋の隅に置いてあった鞄を取り、肩に掛け玄関へと歩き始める。
後ろから軽い足音が聞こえてくるが、俺は振り向かなかった。
また心が折れそうになるから。
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