壁其の一

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其れはある夏の日の私が家に一人でいた休日の昼下がりの事。 其の日はよく晴れていて、十分に明るかったので、電気を点けずに朝から過ごしていた。 昼食を食べ終え、汚れた食器も洗い終えたのでゲームでもしようと思い部屋を出ようとした私は 「ゴンッ」 と音が鳴る程、扉付近の出っ張った壁に右足の指をぶつけ親指に衝撃を感じた。 余りの痛みに 「痛っ」 と思わずしゃがみ込み、てっきり親指をぶつけたと思って右足を見てみると、肝心の親指を含め四本は何ともなかったものの、何故か一番小さな小指だけが其の衝撃を物語るかの様に爪には横皹が入り、其の下では内出血までしていた。 其れを見た瞬間、理解が追い付かず、 「へ?」 と間抜けな声を出した。 暫くして、どうやら小指を壁にぶつけたらしい事が理解出来ると、 「どうやってぶつけてん私…」 なかなか引かない痛みを堪えながら真っ先に浮かんだ疑問が口をついて出た。 其の問いに答える者は居なかった…。
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