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…朱桓が孫権の側に仕えてしばらくした頃、余姚県〈ヨヨウケン〉という場所の県の長が病死し、空席である話が孫権の耳に入った。
孫権は朱桓を呼んだ。
「休穆よ、わたしは君に任務を与えようと思う。どうかな」
朱桓は頷いた。
「何なりとお申付け下さい」
「では余姚県で県の長官の欠員が出た。君がそこに赴き、任務につくのだ」
朱桓の片眉がぴくりと動いた。
「わたしに県の長となれ、そうおっしゃるのですか」
「そうだ。不満か?」
朱桓は慌てたように首を横に振り、礼をとって言った。
「…いえ、不満などありませぬ。抜擢して頂きありがとうございます」
孫権は満足して頷いた。
「わたしは休穆に期待している。無事に任務を成し遂げたら、こちらに呼び戻すから頼んだぞ」
「分かりました。では早速準備にかかります」
「気が早いのう。急がせるつもりは無いから、行政官に状況を聞いてから赴任しても良いのだぞ」
「いえ、やはり現地に行ってこそ分かる事もございます。すぐに出発する事をお許し下さい」
孫権は頷いた。
「よし分かった。好きにするが良い」
朱桓は礼をとって退出し、足早に自宅に戻るのだった。
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