660人が本棚に入れています
本棚に追加
/303ページ
…朱桓が余姚県の長になって一年が過ぎようとしていた。
疫病も徐々にその勢いを弱め、今では落ち着きを取り戻してきている。
しかし、緊急時の対策に蔵を放出したため、県の財政は確実に悪くなっていた。
朱桓は自分の食べれる食糧すら後回しにして、太守と孫権に使者を送って談判し、納める分を軽減する交渉をしながら、何とか建て直そうとしていた。
士人と民衆はその事を知っていたから、朱桓が町を見回っていると、いつも食事を振る舞おうとした。
朱桓はあまりに空腹の時以外は、それすら受け入れずに言った。
「まだまだ皆体力をつけねばならないから、それを食べて滋養をつけるのだ」
そんな彼も、自分を慕って来る周蘭の用意したものだけは食べた。
「県長様は働きすぎです」
周蘭は心配するように、いつも言った。
「そんな事は無い。俺のような若輩者を皆が必要としてくれる以上、俺は休む訳にはいかんのだ」
朱桓はその食事を噛み締めるように食べながら言った。
しかし、人間無理は禁物である。
朱桓もついに過労で倒れてしまうのだった…
最初のコメントを投稿しよう!