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…朱桓は自分がいつ倒れたのか分からず、周囲を見渡すと、どうやらそこは薬所のようであった。
辺りは暗くなっており、明かりの灯る中でしばしぼんやりと考える。
(どうも頭痛がするな…)
朱桓は身を起こすと苦笑いをした。
(人の忠告を聞かず、倒れていたのでは世話ないではないか…)
「…お目覚めですか」
その声に振り返ると、妙以が立っていた。
「ああ、すまぬ。俺は薬所で倒れたのか…」
「いえ、正確には別の場所ですが…。周蘭が県長様を運んで来られたのです」
「周蘭が…」
「後で声をかけておあげ下さい。ひどく慌てて、県長様が倒れた事で混乱していましたから」
朱桓はまた苦笑いをした。
「そうか。あれは何かと俺に尽くしてくれる。有り難い事だな…」
「周蘭は昔は荒くれてましたが、今はもう県長様の元で働くのが嬉しいみたいですね…これは食事です。お食べ下さい」
「ああ、有り難う…」
朱桓がその温かい汁物を食べている間、二人の間に何となく沈黙の空気が流れた。
妙以はその様子を何となく見ていたが、不意に視線が合うと、慌てたように逸して、何となく薬を片付けはじめた。
朱桓はそんな彼女の様子がおかしく感じ、また感謝するのだった…
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