第二章~余姚県~

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…それからさらに半年の月日が流れた頃、主の孫権から使者が余姚県を訪れた。 朱桓は尋ねた。 「我が君はお変わりないか」 「はい。我が君は朱桓殿を呼んで来るようにおっしゃいました。別の任務があるとの事なので、ここを引き払うお仕度をなさって下さい」 「そうか…。戻って我が君に了解したとお伝え下さい」 使者は一礼して退出した。 朱桓が県長の任を離れる事を知った民衆は、皆その事を惜しんで、またきっと昇進するに違いないと喜び、様々な作物や品物を持って役所にやって来る者が、後を絶たなかった。 朱桓は言った。 「皆すまない。俺のために、ここまで想ってくれるとは…」 「朱県長がここで、私達のためにしてくれた事に比べたら、足りない位です」 朱桓が感激して涙を流すと、それに感動しない者はいなかった。 やがて妙以が現われた。 「行かれるのですね」 「…そうだな」 側にいた周蘭はもどかしく思ったが、それを口には出せない。 「妙以、俺はまだ次の任務が何であるかは知らぬ。だから今回は一人で戻る。しかし、いつか…いつかまたここに来たら、俺について来て欲しい…。分かるか」 妙以は微笑んで頷いた。 周蘭は言った。 「朱桓様、俺はついて行きますよ」 朱桓は頷いた。 「そうだな。では周蘭と二人で行くとするか」 空は朱桓が余姚県にやって来た時のように、晴れ渡っていた。 後に敵将をその名だけで後退させた朱桓も、この時はまだ二十代半ばを過ぎた無名の青年に過ぎないのだった…
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