660人が本棚に入れています
本棚に追加
/303ページ
…朱桓は兵士の名簿を確認しながら、彼らの顔を覚えようと、数日に渡って訓練の最中に見回った。
彼は記憶力ずば抜けて良く、人と一度会えば何十年も忘れる事は無かったと、後に言われている。
この時はまだ彼は若かったので、自分の下についた兵士に対する想いが、そうした行動をとらせていたのである。
校尉には補佐役として、長史(部隊長を統率)と司馬(兵士を統率)を設ける事になっている。
朱桓は叔父の朱揮を長史に、周蘭を司馬に任命してもらえるように申請し、これを許可された。
これを聞いた朱揮は眉をひそめた。
「わしは古傷があるから、あまり小回りは聞かないぞ」
朱桓は頷いた。
「司馬には若い周蘭がいます。今の俺には、叔父上の経験が必要なんですよ」
朱揮は頷いた。
「それも分かるが…、子範(朱拠)はどうするんだ?まだ十才になったばかりだ」
「それについては、人に預けようと思います」
朱拠は言った。
「父上、この機会です。わたしは私塾に入り、住み込みで学問を学びたいと思います」
朱揮は唸った。
「お前…。いや、子どもというのは、いつの間にか大きくなるものだなぁ」
朱桓は頷いた。
「全くですね。子範、しっかり学んで、いずれは我が君を助けるようにならねばならんぞ」
朱拠は頷いた。
「もちろんです、従兄さん」
二人は顔を見合わせて微笑むのだった…
最初のコメントを投稿しよう!