第三章~朱家軍~

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…朱桓は兵士の名簿を確認しながら、彼らの顔を覚えようと、数日に渡って訓練の最中に見回った。 彼は記憶力ずば抜けて良く、人と一度会えば何十年も忘れる事は無かったと、後に言われている。 この時はまだ彼は若かったので、自分の下についた兵士に対する想いが、そうした行動をとらせていたのである。 校尉には補佐役として、長史(部隊長を統率)と司馬(兵士を統率)を設ける事になっている。 朱桓は叔父の朱揮を長史に、周蘭を司馬に任命してもらえるように申請し、これを許可された。 これを聞いた朱揮は眉をひそめた。 「わしは古傷があるから、あまり小回りは聞かないぞ」 朱桓は頷いた。 「司馬には若い周蘭がいます。今の俺には、叔父上の経験が必要なんですよ」 朱揮は頷いた。 「それも分かるが…、子範(朱拠)はどうするんだ?まだ十才になったばかりだ」 「それについては、人に預けようと思います」 朱拠は言った。 「父上、この機会です。わたしは私塾に入り、住み込みで学問を学びたいと思います」 朱揮は唸った。 「お前…。いや、子どもというのは、いつの間にか大きくなるものだなぁ」 朱桓は頷いた。 「全くですね。子範、しっかり学んで、いずれは我が君を助けるようにならねばならんぞ」 朱拠は頷いた。 「もちろんです、従兄さん」 二人は顔を見合わせて微笑むのだった…
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