第三章~朱家軍~

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…各地を平定し、山越の討伐も一段落した朱桓は呉郡に凱旋した。 孫権も朱桓の活躍を喜んで、やがて彼を裨将軍〈ヒショウグン〉に昇進させ、新城亭侯の爵位を与えたのであった。 朱桓は一通りの手続きを終えると、余姚県に赴く事にした。 朱揮は不思議そうな顔をした。 「何をしに行くのですかな?」 朱桓は珍しく言い淀んだ。 「まぁ、ちょっとした用事で…」 司馬の周蘭はそれを見て、笑いを堪えるので大変だった… …余姚県に着くと、彼を見知った住民は皆朱桓に声を掛けた。 「これは朱休穆様っ、お元気ですか?」 朱桓は微笑んだ。 「ああ、元気が一番の取り柄だからな」 彼は薬所に着くと、やや緊張した面持ちで扉を開けた。 来訪者に気付いた虞妙以は、薬の整理をしていた手を止めて振り向いた。 「あっ…」 虞妙以は喜びの笑みを浮かべた。 朱桓は言った。 「…待たせたな」 虞妙以は首を横に振った。 「いいえ、今この場に来て頂けたから、そんな事は忘れました」 虞妙以は嬉しさの余りに涙を浮かべた。 外にいた周蘭も、もらい泣きをしている。 「…俺について来るか?」 朱桓は手を差し出した。 虞妙以は何度も頷いて、その手を握った。 「もちろんです…ええ、喜んで…」 朱桓と虞妙以はお互いを見つめて、握る手を離さないように力を込めるのだった…
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