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朱桓、字を休穆という。
光和元年(178年)の生まれだから、孫権とは四才しか変わらず、同年代と言える。
呉の名家・朱家の出身である。
当時、同姓の朱治という将軍が早くから孫堅に仕えてすでに地位を築いていたので、それを見た朱桓も「よし、俺も」と思い、孫権に仕官したのであった。
年が近い事もあって、孫権は朱桓を話相手にする事が多かった。
まだ若い孫権の周りには、父や兄の代からの者達が彼の輔佐役としていたため、時々は年が近い朱桓と話したくなるのである。
朱桓はもともと人の下につくのを嫌う性格だったが、この若い君主には好感を持った。
俗に言う、馬が合うという事だろう。
ある日、孫権は朱桓を呼ぶと碁の相手をするように言った。
朱桓は言った。
「それは良いのですが、恐れながら我が君の腕前ではわたしには敵いますまい」
孫権は鼻息を荒くした。
「やってみなくては分かるまい」
朱桓は言った。
「わたしは我が君の碁の戦術を幾通りも記憶しています。今新たに戦法を変えない限り、勝つのは難しいでしょう」
孫権は舌打ちした。
「そうか…。物覚えが良い奴め。では休穆(朱桓)が教えてくれれば良いではないか」
朱桓は顔をしかめた。
「碁なら諸葛謹殿の方が上手いでしょう」
「いいから早く座れ」
孫権が急かすと朱桓は仕方なく席についた。
しかし、彼の表情はどことなく楽しげであったという…
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