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「明日香~!」
後ろから名前を呼ばれ、明日香が急に止まったため有紗はその勢いのまま明日香にぶつかった。
「なに~?」
「大丈夫?」と小さく有紗に声をかけながら、声の主の方を向いた。そこには左肩に鞄をかけながら走ってくる少年がいた。
「拓也見なかったか?待ち合わせしてたのにあいつ来ないんだよ」
「慎吾が遅かったんじゃないの?」
左手で追い払うような仕草を見せた。
「んなわけねーよ。有紗は知らねえか?」
有紗は首を横に振った。
「慎吾~!遅いぞ!」
上の方から声がしたので、3人が一斉に上を向いた。窓から身を乗り出して手を振ってる姿が見えた。
「拓也!」
「おまえ遅いんだよ!同じクラスだ!1組」
「あ~そうでしたか。すいませんでした」
視線を戻し、慎吾は玄関に走っていった。
「やっぱり慎吾が悪いじゃん。バカだね~」
同意を求めるように明日香が有紗の顔をのぞき込むと、有紗は首を斜めに傾げた。
「まあいいや。早く教室行こ?初日から遅刻は格好悪いよ」
ちょうどその時チャイムが鳴った。
「あ゛~コレ始業のチャイム」
有紗が時計を見るとまだ余裕があった。
「…まだ5分前」
「あ、本当だ」
ほっとしたように明日香は笑顔を見せた。有紗はそれをちらっと見て、靴をはきかえて校内に入っていった。
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