旅立ちの日

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有紗は自転車に鞄を入れると、そのまま学校を去ろうとした。 「有紗!ちょっと良いか?」 誰かに呼ばれ有紗は自転車を止め振り向いた。走ってくる慎吾の姿があった。 「…何?」 「お前さ、今あの絵持ってるだろ?」 不思議そうな顔をする有紗の横に立ち慎吾が言った。 「…屋上の?」 「そう!それくれ!」 「え…」 有紗は戸惑った。他人に絵が欲しいだなんて言われるのは初めてだった。 「…ちょっと待って」 有紗は鞄から絵と鉛筆を出して、裏になにか書いて慎吾に渡した。 「サンキュー。後さ…」 「ありがとう…楽しかったよ。また…メール…してね」 慎吾の言葉を遮るように有紗は言った。今までにしたことのないくらいの笑顔で、でも目はどこか悲しそうだった。 そして自転車を漕ぎだしていった。
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