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「さて、俺に違う情報教えたのは誰だ?」
「俺で~す」
慎吾が右手を上げて答えた。
「正直者だな~。じゃあお前から自己紹介ヨロシク」
「うぃっす」
そのまま慎吾は立ち上がった。
「名前は中沢慎吾で部活はサッカーでマネしてて、趣味は音楽鑑賞って感じですな」
「慎吾はサッカー部か…ってマネ?選手じゃないのか?」
クラスに少し気まずい空気が流れた。
「俺、サッカー好きなんだけどまともに出来ないから事務してるってわけ」
苦笑いしながら慎吾が答えた。
「下手だっていいじゃないか。一緒にサッカーやろうぜ?」
「一緒に?」
「あ、俺サッカー部顧問になってるから」
「マジで!?」
「マジで」
大げさに驚いて見せた慎吾を川島は笑って見ていた。それを見ていた生徒も声を上げて笑っていた。
「まぁいいや。じゃあ次、その右の女子」
さっきまで賑やかだったクラスが、川島の一言で一瞬静かになった。不思議な雰囲気に川島も少し戸惑った。そんな中、有紗がそっと立ち上がった。
「…高橋有紗…美術部」
小さな声でそれだけ言うと有紗は座った。
「…それだけ?」
川島は余りにも短い自己紹介に軽くコケる動作を見せた。それに動じることなく有紗は首を縦に振った。
「えっと…趣味とかない?」
有紗は首を横に振った。
「ほら、音楽鑑賞とかさ?あ、美術部なら絵を描くのが…」
「無い…です…」
ようやく振り絞ったような声で有紗が答えた。
「じゃあ特技とか…」
「先生そのくらいにしてあげてくださいよ」
川島の話の途中で明日香が立ち上がって割り込んだ。それを見た川島は少し戸惑ったが聞くのを止めた。
有紗は立ったままの明日香の制服を軽く引っ張り注意を促した。
「あ、すみません…」
そう言いながら明日香は静かに座った。
「じゃあ次…」
…その後も自己紹介は続いた。その間、明日香は有紗に話しかけていたが変わらず首を動かすだけだった。
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