新しい季節

2/7
前へ
/147ページ
次へ
公園の桜が散り始めた4月の始め。 中学校の3年玄関ではクラス分けの掲示の前に、生徒が集まって騒いでいた。 友達と同じクラスか。担任は誰か。あいつとは違うクラスか。 などそれぞれ期待や不安を持ち自分の名前を探した。 その集団の少し後ろで自分の名前を探す少女がいた。風にロングの髪をなびかせ、手で目を擦りながら名前を探した。 「…高橋…高橋…あ」 そう呟きながら自分の名前を見つけた少女。 「あ~り~さ」 そのとき少女の名前を呼びながら飛びついてきた。少女は特に驚いた様子は見せず振り向いた。 「また同じクラスだね」 「明日香…」 風に消されそうな小さな声で友達の名前を呼ぶと、乱れた髪を軽く整えた。 「またヨロシクね」 明日香はそう言うと、右手を伸ばして強引に有紗の右手を掴んで握手をした。有紗はその握られた右手をじっと見て、そのまま視線を上げた。無邪気に笑う明日香の顔があった。
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加