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「この角を左に曲がって・・・って城の前の通りを通るのか」
一人で納得したアスカは歩を速め、地図に視線をはしらせながら角を曲がろうとした。
すぐ後ろでコスケが小さく“あっ”と声を漏らしたのも聞き取れないほどにアスカは地図に夢中になっていたのだ。
ドンッ
鈍い音と共に人が倒れる音が静かな町並みに響き渡る。
「いったぁ…」
「!!、すみませんー…」
慌ててアスカは謝るー、が
隣に居た大きな犬は黙って居なかった。
『ウゥゥウウ…!!!』
全身の毛並みを逆立て、牙を剥き出しにし、前足に力を込め爪を地面に突きたて、全身が震えるかのようなおぞましい唸り声をあげた。
アスカにぶつかった女(ひと)は、その様子を見てぴしゃりと“やめなさい”といい放つと大人しくそれに従った。
従ってはいるものの、アスカをじっと睨む。
「すみません、よそ見をしていたもので…」
「いえ、こちらこそ。地図を真剣に見すぎてました。」
すっ、と自分のせいで倒れてしまった女に手を差し伸べるが首を振り、吠えたてられた犬に掴まって立ち上がった。
「では私、急ぎますので…」
女は軽く頭を下げ、今アスカたちが来た道を走っていく。
ここでようやく、口を噤んでいたコスケが目を丸くして居ることに気がついた。
「…どうかしたのか」
2、3秒遅れてコスケがこちらを見る。
まだ目をぱちぱちとさせていたが口をゆっくりと開いた。
「あんちゃん…いまの人って…!!」
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