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ドシャッ…
ゲシッ!! ドサッ…
老人に投げ捨てられた重い荷物を顔面に喰らい、青髪の少年は大声をあげた。
「いってええ! 何しやがるクソジジイ!!」
「金なしは帰れと言ってるんだ!!」
ここはリーガス國。
寒い気候が特徴的だが、この國独特の草花が力強く育っている。
そんな國の宿から追い出され、荷物を投げ捨てられたのは、赤髪の長身な青年と、青髪の小さな少年。何か気にくわないと言ったように宿のオーナーに鋭い視線を向けた。
見かねた赤髪の青年がボソッと呟く。
「ココロのせめーヤツ…」
「なんだと赤髪!!!」
………
結局話しは折り合わず宿を探すハメになった。
青髪の男…コスケが、赤髪の男…アスカに話しかける。
「あーぁ、また野宿か…あんちゃん、どうする?」
「もう一度探してみるか…」
もう、うんざりだよ。と言わんばかりのコスケを横目に、溜め息混じりにそう返答し、暗闇しか見えない夜道を宿を後に歩きだした。
***
「…どうしよう」
リーガス城の敷地内でかさこそと二つの影が動いていた。
一人は黒髪に赤いリボンが印象的な、この國の姫…メイリア。
もう一人…否。
一匹は銀色の毛波の狼…アルフ。
城から逃げ出す為、作戦もなく門に近付いていた。
表には兵が4人、裏には2人。外回り合わせて10人…
メイリアはそう考え始めた。薄明かりとはいえ、ここは國の誇る主となる城…なかなか逃げ出すのは安易ではない。しかし、諦めの悪いメイリアは3時間もの間、交替の隙を見計っていた。
高くそびえる城からは見えない木陰から、そっとその瞬間を待つ。今か今かと待ちくたびれてしまったアルフを見てから、キラリと銀色に光る高価な銀時計を開いた。
「…あと5分」
そう言って、荷物を握りしめた。
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