秋の訪れと共に

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高校初めての秋。少し肌寒い季節の訪れ。心地よい布団の暖かさが眠気を誘う。それは俺の遅刻への道を作り出そうと躍起になっているように思える。 ……ってダメだろ。 目を覚ますと見慣れた部屋。布団を蹴飛ばしベットから上半身を起こす。 貰い物で愛用している黄色い猫の目覚ましが今頃『起きるニャー。朝だニャー』と鳴り始めた。 もう所々色が剥げかけているが、新しくしようと思えないのは何故だろう。 目覚ましを素早く止める。毎日最初の方の台詞までで止めるので、実は最後まで聞いた事がなかったりする……まあ、どうでもいい話。 「ふぁ……ん―」 大きく伸びをして欠伸を噛み殺す。さて、先に顔を洗わなきゃね。 部屋を出て階段を下りる。 うちは二階建ての一軒家。うちみたいな田舎過ぎず都会過ぎず微妙な場所だから建てれることができた至極普通の家。 などと寝ぼけ頭で普段考えないような事を考えていると、洗面所にたどり着く。 「あ、父さん」 先客がいた。うちの父さんだ。四十代半ばで、ひょろりとした体格。チョビ髭を生やしている。 こだわりらしく、お前も生やさないかと勧めてくるんだけど、まだそんなに髭は生えない上に嫌過ぎる。
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