秋の訪れと共に

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「おい、信也(しんや)。いつも言っているだろう?」 「あー、ごめん。おはよう」 父こと直原三郎(なおはら さぶろう)は挨拶にはかなり五月蝿い。それもそのはず、うちのすぐ隣にある喫茶店を経営しているからだ。 接客の基本は挨拶からと、口をすっぱくして家族にも言っている。 チェーン店ではなく個人の店。それなりに人気で学生がよく通う。俺もバイトさせて貰っているんだけど。 今日は珍しく休みらしく、ゆっくりみたいだ。いつもならモーニングの仕込みなんかをやってる時間だしね。 「うむ。お、そうだそうだ……今日は加奈(かな)が朝食作るらしいぞ」 「え゛」 何気なく言った父の言葉に非常に嫌な予感がする。妹の加奈は何か大事な報告やお願いがあると、朝弱いくせに必ず朝食を作る。 顔を洗いタオルで顔を拭く父は、気にした様子はなさそうだけど。 「加奈の奴彼氏でもでき……る訳ないか……ハハ」 父が般若のような表情をしたので言葉を止める。加奈は中学三年。出来てもおかしくないんだどね。 「早く来いよ」 そう言い残しのそのそと先に行ってしまう。 歯を磨きながら鏡を覗くと、見慣れた自分の顔。容姿は平均的なレベルで地味な方だと思う。正直まだモテ期なるものにお会いした事がない。
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