プロローグ ~恋した夏休み~

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よく見ると、その少女は、同じクラスの 空山 葵 (ソラヤマ アオイ)だった‥ いつもポニーテールに黒ぶちメガネのスタイルだから、すぐには解らなかった。 学校では、休み時間にいつも図書室にいるおとなしい娘だ。 「空山さん!?どーしたの!? 何やってんの!?」 「‥え?わたし?わたしはここで数学の問題集をやってたんだよ‥。」 「空山さん!!とりあえず片付けて外に出よう。もう閉館だから。」 「え‥!?あぁ!?‥‥う‥うん。」 孝昭と葵は図書館から出た。西の空はオレンジ色に成りはじめていたが、まだ蒸し暑く、セミもせわしなく鳴きつづけていた。 夕日が二人を照らす。 (うぉ‥俺、空山葵ちゃんがこんなに美少女だったなんて知らなかった。) 二人は帰り道が同じ方向だったので、一緒に歩き出した。 「‥‥‥‥‥。」 「海村くん‥。」 「はっ!はい!」 「わたしたち、話したことってあまんまりなかったよね‥。」 「あ、うん‥。」 「海村くんって、よくこの図書館に来るの?」 「え、まぁね‥。」 「じゃあ、またここで会えるかもね‥。」 「‥‥‥うん‥。」 (うわっ!俺、さっきから、あいづちしかうってないよ。 あ~。どうしてもさっきの寝顔を意識してしまう‥。) 「あ、あのさ‥空山さんさ、行きたい高校とかどこか決まってんの?」 「うん‥一応第一志望は星南高校かな‥。」 「やっぱ、高いとこ狙ってるんだね‥。 俺なんていくら頑張ったって、とどかないよ~。」 「そんなことないよ。海村くんだってやればできるよ!」 (あぁ~っ!俺も星南高校に行きたいなぁ~。 葵ちゃんと一緒に‥‥) 「もしよかったら俺に勉強教えてくれないかな??」 「え‥!!!?」 「あっ!‥‥いや、嫌だったらいいんだよ。俺、数学苦手だから夏休み中に克服したくって‥‥。 ‥やっぱ迷惑だよね‥空山さんだって自分の勉強があるだろうし‥。」 「嫌じゃない!」 「え‥!?」 孝昭は思わず立ち止まる。 葵は振り返り、 「わ、わたしとでいいのなら‥よろしくお願いしますっ‥。」 「え‥いいの?」 葵はコクリと頷く。 「よ‥よろしくお願いします!」 (やったー!!!!!) ‥‥こうして二人は、ほぼ毎日、図書館で勉強をすることになったのである。 図書館内では、お喋りが出来ないので、お互いひそひそ小声で会話した。 孝昭は、ほんの些細な事でもドキドキ。 どんどん葵に惚れ込んでいった‥。
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