再会

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波多高は本館、北館、別館の三つの校舎の造りになっている。本館には職員室や図書館、実験室などが揃っている。 三年と二年の教室は北館の一階と二階にあり、他はパソコンの教室や作業室などに使われていた。 そして一年生は別館の一階にある。本館、北館は運動場や道路のある方へ面しているが、北館はその二つの棟の後ろに隠れており、森に面していた。 本館、北館とは別に立てられた北館は、一見新しいようにも見えるが、その裏では教師の目が行き届かない教室などがある。 脅しや恐喝などを行うのには打って付けの場所だった。そしてその北館には音楽室がある。白鳥にとってみれば北館はホームであって、縄張りの一つである。自分の部屋のように知り尽くし、毎日別館へと通う日々を送っていた。 波多高男子の表のリーダーが雨宮なら、裏の波多高男子のリーダーは白鳥であって、波多高の治安を暴力で安定させていた。 それを波多高男子だけが知っている。 別館の下駄箱に入ると、そこで溜っていた一年の女子達が白鳥の存在に気付いた。いつもと違う別館の雰囲気に生徒が騒ぎ始める。独特の空気と、華のあるオーラを撒き散らしながら、自分を見て騒ぐ女子達に見向きもせず白鳥は歩き続ける。 向かう先は、一年D組。 先生との関係を見られた青山千里の場所。 いつしか白鳥の周りには一年の女子ほとんどが集まっていた。どこへいくんだろう、とか、誰に会いに行くんだろう、といった視線を白鳥に向かわせる。それに白鳥は応えないままD組に辿り着く。 白鳥は閉まったままのD組の扉を開け、無遠慮に中に入った。女子のほとんどが廊下に出ていたから、教室の中は男子がほとんどだった。白鳥が来ていると知らなかった女子は黄色い声を上げ、男子は眉間に皺を寄せながら、怪訝な表情を浮かべる。 その中にいる女子に白鳥は近付く。女子は顔を赤くさせて、白鳥が自分に近付くのを黙って見ていた。明らかに動きは緊張していたのは明確だった。 「ねぇ、青山って誰?来てるかな?」 いつものような笑顔。いつものような優しい言葉。皆に見せる様の白鳥瑞稀だ。 そんな風に話し掛けられた女子は、一層動かなくなった。口だけをパクパクと動かし、「まだ…来てないです……」と答え、青山の席を指差すのが精一杯だった。
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