再会

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白鳥は、その一年の指差した先を暫く眺めると、おもむろに近付き椅子を引いて腰掛けた。その行動に、教室にいた生徒や廊下から覗く生徒は不思議そうに首を傾げる。 白鳥は机に足を乗せて、椅子の背もたれに体重を預け腕を組んだ。 時間が過ぎる度に、机の上にある白鳥の爪先は小刻みに揺れる。苛立ってる証拠だ。その空気が伝わり、声を発する者はいなかった。 もうそろそろ授業が始まる頃なのに、青山の姿はまだ現れない。 限界が来たのか、青山の机を思い切り蹴り飛ばし椅子から立ち上がった。そして扉に近付き、戸を開けようと手を伸ばすと目の前の扉は勝手に開いた。廊下から誰かが開けたらしい。 「ちょっと、誰よ!あたしの机倒したの。誰も直さないの?ほんっと冷たいわね」 入って来た女子は教室に入るなり大きい声を張り上げ、白鳥が蹴り飛ばした机に向かった。腰を屈めて手早く直せば、手の平をパンパンとはたき「よし」と呟いた。 その姿を見た白鳥は、教室の扉の前から顔だけを動かして青山の行動を捉えたまま、口許は緩く微笑んだままだった。 青山は教室にいる一年生の反応を、おかしいと気付いた。自分の友達も、クラスメイトも誰も話し掛けには来ないし、いつもより殺伐とした雰囲気に鳥肌が立った。 「な、なによ…。気味悪いわねっ。」 「青山さん、ちょっといい?」 「ぁ、アンタ…昨日の……」 一年生の別館に滅多には来ないはずの二年生が、しかもあの波多高男子の一人が自分に話し掛けて来た。 それも昨日の今日で。 青山は、この独特の雰囲気を出しているのが白鳥だと気がつき、圧倒される圧迫感に後退りする。 白鳥は笑顔だけれど、その笑顔は笑顔でないような…、見られるだけで背中からは嫌な汗が溢れ出た。 白鳥は、おもむろに青山の左手を掴むと教室から出た。 二人の向かう先は、白鳥の縄張りの一つ…そう、二人が出会った音楽室だった。
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