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音楽室に連れて来られた青山は、未だに落ち着きのない表情で辺りをキョロキョロと見渡していた。
「あ、アンタここ座ってて」
青山は白鳥に、音楽室に置いてある肘掛け椅子に無理矢理と腰掛けさせられる。
「ねぇ…用件はなんなのよ」
青山に話し掛けられた白鳥はあからさまに表情を歪ませた。明らかに先程とは違った、嫌悪感と憎悪を含んだ笑みで。
「別に?」
「嘘」
「ホントに、只の気紛れ」
そう言うと白鳥は、青山の腰掛けている椅子の肘掛けに両手を付き、青山を逃げられない様にする。その相手の行動に青山は眉をひそめた。
青山の茶髪に染めた、腰に届くほどの長い髪を白鳥は掴むと、自分の方に引き寄せた。
「単純に、アンタがウザイ。邪魔。消えて欲しい。だから、会いに来た。」
「――は…?」
「ねぇ…俺の前から消えてくんない?」
白鳥は薄い笑みを浮かべたまま、淡々と言葉を並べた。髪を掴んでいた腕に力を込めれば、青山は「痛い」と小さく漏らし、表情を歪ませる。
その青山の顔を見れば、一層白鳥は笑みを深くさせる。その笑顔は残酷で残忍で…。
青山は自分の髪を引く相手を睨み付けると、負けじと相手の頬をひっぱたいた。
「―つっ」
その衝撃で青山の髪を掴んでいた手に引かれ、青山も表情を歪ませた。
「あんまり私を甘く見ないでくれるかしら?すっごいムカつくわ。」
叩かれたまま顔を横に向けたままの白鳥は、その青山の一言を聞くとニヤリと微笑んだ。ゆっくりと白鳥は青山に振り向けば、また髪を引き寄せる。
「昨日の…見たら、もうこの学校にはいさせない」
「学校でしてる方が馬鹿なのよ」
青山はすかさず反論すれば、白鳥はまた笑みを零す。
「アンタ面白いね…。」
白鳥はニッコリと笑いながら、相手の髪を離して囁いた。明らかに楽しんでいる表情で。それを聞いた青山は「…そりゃ、どうも。」と答えた。
青山は急に笑い出した白鳥を怪訝そうな表情で見つめた。
白鳥はそんな表情を浮かべる相手を無視して、ピアノの椅子を引きずって青山の椅子の前に置いた。
その時の白鳥の瞳は凛々と輝いていたのは、白鳥も青山も気付かなかった。
自分の前に腰掛ける相手を静かに見つめていた青山は口を開いた。
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