条件

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「……本当の用は何なの?さっきまでと、違うんじゃない?」 自分の前に腰掛けた相手に向けて言った。明らかに先程とは態度が違うし、他よりその楽しそうな顔が気に入らない…そう思ったから。 白鳥は落ち着き払った態度で言った。 「アンタが気に入ったから」 「はぁ?意味分かんな…」 「その態度とか、色々。他に居ないから。」 青山は思わず赤面をした。 ―他に居ないから その言葉は、『特別』という意味に聞こえた。ただ私の思い違いかもしれない、自惚れかもしれない。 だけど――… (…待った待った!!) 思考を止めようとして、青山は頭を思い切り振った。そのせいで長い髪は横になびく様に流れる。その行動に驚いた白鳥がちらりと見えたけれど、そんなのどうでもいい。 さっきまで私を『邪魔だから消す』と脅していた男にときめくなんて、死んでも嫌だと、とにかくこいつは猫被りだから誰にでもこの態度なんだろうと、必死に自分に暗示した。 「…そ、そうよ!黙ってあげる代わりに条件があるわ!!」 急に思い出したかのような口振りで、人差し指と中指の二本のを立てた手を白鳥に突き出す。その二本の指の意味は『ふたつの条件を飲んでもらうわ』といった強い意思がひしひしと伝わった。 白鳥は表情を変えずに「まだその話?」と口調が嘲笑うかのように言えば、青山は「私はその用でここに来たハズなの」と真面目顔で答え、白鳥は苦笑する。 ピアノ椅子の背もたれに体重を預けながら白鳥は言葉を促すように、手の平を青山に向け、どうぞ続きをと言って微笑む。 青山は手のひらを拳にして口許へ持って行くと、わざとらしい咳払いをした。 「まずひとつ」 人差し指を立てて力みながら言う。その姿に白鳥はもう半笑いだったが、青山は無視をした。 「私の昼食を毎日、これから半年間、学食の日替わりランチを奢る事と―…」 そこまで言うと、目の前で余裕ぶっこいていた白鳥の目が変わった。明らかに理不尽極まりないといった反論の目で。 「…はぁああぁぁ?」 「当たり前でしょ、ばらされたくないなら黙って聞きなさい」 「…っ、背に腹はかえられな…いな……」 白鳥はぐっと息を飲んで口を噤んだ。その姿に青山は大きく頷く。 「それとふたつめ、ね」
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