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何故自分を呼んだのだと雨宮に聞かれれば、白鳥はトイレの入口から廊下を覗き人がいない事を確認して、雨宮に振り返った。
「例のあの子…一年の青山って言うんだけど、雨宮を紹介しろって言われて」
白鳥は顔の前に両手を合わしながら、頭を少し下げ「お願いっ」と願い出た。
その姿を見た雨宮は、うーんと唸りながら後ろ髪を弄り、はっきりした答えを出そうとはしなかった。
「やっぱり駄目?」
「いやぁ…だって、あきはどうすんの。俺、恋人いるし。」
雨宮の言葉を聞けば、白鳥は踏ん反りかえ、開き直ったように残酷な笑みを浮かべた。自分に反対するのは例え友達でも、容赦はないらしい。
「彼女…欲しいんでしょ?あきなんて何も当てはまってないよ、雨宮の望むものなんて」
その一言に雨宮は眉をしかめる。白鳥の言葉は、今まで一緒に過ごした友達とは思えなかった。雨宮は歩み寄り、白鳥の横に壁に手を突き逃げられないようにする。
「お前、最悪」
白鳥は表情を変えず、「本当の事、でしょ?」と、依然微笑んだままだった。
「自分の身を守る為なら、他人が嫌な事も押し付けんだな?」
「もちろん、その為の友達でしょ」
雨宮は白鳥から顔を逸らせば大きく舌打ちし、トイレから出て行った。
白鳥はその後を追い掛ける素振りなど見せることなく立ちすくむ。一人になった白鳥は鏡に映った自分を見て呟いた。
「幸せになってもらいたいじゃない…雨宮にも、あきにも」
白鳥は乾いた笑みを零して、前髪をかき上げれば外から響くチャイムの音に気が付いた。そして、いつもの表情に無理やり変える。
「さぁ、勉強の時間がきたねぇ」
白鳥は大きく伸びをしながらトイレから出て廊下をゆったりと歩んだ。
青山にどう言い訳しようかな、と考えたいた俺は甘かった訳で――…
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