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自分の教室の二年C組に戻った白鳥は、教室の後ろから中に入り雨宮と稲村には目もくれず自分の席へと向かった。 白鳥の机は一番前の左端にあり、雨宮と稲村は廊下の窓際席にあるため離れていた。 白鳥は、離れていて寂しいと思っていたが、今日程離れていたいなんて思った事がなく、初めてこの席で良かったと思った。 鞄から小さい置き鏡を取り出すと机の上に置き、自分の顔を覗き込んだ。 「…酷い顔」 ぽつりと独り言を呟けば、前髪を止めていたメタリックに輝いた銀色のピンを外した。 白鳥が櫛で髪を整えているのを見ていた近くの女子が二人近寄り、「私イジっていい?」と問い掛けて来た。 白鳥は笑顔で、「うん」と頷けば、櫛を問い掛けて来た女子に渡した。 自分の所に来た、今櫛を持っている女子の名前は『榊原 美穂』という。そして一緒にいる女子は『遠藤 なお』といって、いつも榊原と共に行動し、白鳥の周りに付いている。 大袈裟に言えば『白鳥親衛隊』に近いもので。 榊原が白鳥の髪に手を取り櫛でときながら口を開いた。 「ね…ねぇ、瑞稀。す、す…好きな子、出来た?」 声は少しうわずっていたが、白鳥はわざと知らない振りをした。そして問い掛けられた話題には、「んー」と考え込んだ。 「何それ、僕全然身に覚えないなぁ」 「嘘よ、だって一年の…」 そこに遠藤が入り込むと人差し指を立てて、喋るな、の合図をした。 「何でもないよ…ほら、美穂ってば瑞稀が好きで堪らないじゃない?取られないか不安なのよー」 遠藤がフォローを入れるが、瑞稀はまた「だから、誰に取られるって言うの?」と追い討ちを掛ける。 「私以外は付き合っちゃ駄目だよ?」 榊原は鏡に映る白鳥に微笑み掛けた。 「大胆だなぁ、美穂は。考えとくね」 白鳥は自分の髪にピンを止めてくれる榊原と遠藤に、ウィンクをする。 白鳥と女子達が騒ぎながら話ているのを、遠くから雨宮が見つめていた。 「あいつは女子かっつぅの!」 そう呟くと稲村は、ふふっと微笑んだ。 「私には言わないの?女子みたいだなぁって」 「あきは、あきだから。そんなの関係ないし…」 そう言うと、雨宮はくるりと後ろの席に座る稲村に振り返った。
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