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一限目の終了の鐘が鳴ると、教科書とノートを素早くしまえば白鳥は立上がり廊下へ出た。 出た途端に教室の中から大きなざわめきが聞こえた。 気になってひょこっとドアから顔を覗かせればざわめきの原因を探した。するとそれは雨宮と稲村からだった。教室中の視線を奪っていた。 「和弘、アンタって本当最悪ね!」 稲村がそう怒鳴るのが聞こえた。振りかざした後の手の平と雨宮の赤く腫れた頬、あぁなるほどと白鳥は思った。 稲村は黒髪をなびかせて雨宮に背を向けると教室から出て行った。それを雨宮は、追い掛けようとも呼び止めようともしない。 ただ一点を見つめたままだった。 すると静かに立ち上がって、雨宮も教室から出て行く。廊下にいた白鳥に視線を一度も合わせる事なく。 白鳥は一年生の教室がある別館に向かっている時、少し気分が悪かった。二人の喧嘩の理由は知らない。 だけど、きっと僕のせいだ。 額につたる汗を手の甲で拭えば、待ち合わせの場所である社会科準備室が見えて来た。 すると後ろから騒がしい足音と、「白鳥先輩!」と叫ぶのが聞こえた。 準備室の扉に手を掛けながら後ろを振り返ると、青山が息を切らしながらこちらへ向かって来ていた。 「せ、先輩…。あのっ」 「中で休憩しなよ。はい、どうぞ。」 未だに息が上がったままの青山に白鳥は準備室の扉を開けて、中に入るように促した。 準備室に二人が入った途端、青山は白鳥の肩を掴み興奮した様子で話し始めた。 「ホンット先輩と会ってから最悪な事ばかりよ!今日なんか上履き隠されるし、教科書破られるし!でも…」 そこまで言うとまた酸素を求めるように、思いきり空気を吸った。 「雨宮先輩と稲村先輩が別れたって噂聞いたんです!さっきここに来る途中に雨宮先輩が来て、友達から始めようかって言われて!あぁもぉ、なんて言ったら良いのか分かんな…っ、とにかく!その点はありがとうございます!!」 「…は?」 白鳥は青山の言っている意味が分からなかった。 雨宮とあきちゃんが別れた? 雨宮が青山に会いに行った? 白鳥の額にまた汗が滲む。 気付かないうちに、知らない噂が自分を取り巻いていた。 それはとても大きな大きな渦だった。
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