61人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
社会科準備室は薄暗く、窓はあっても日当たりはよくない。使わなくなった地球儀や教科書、分厚い地図の本がところ狭しと積み上げられているため狭く感じる程だった。
そんな埃っぽい部屋だが、隅の方は場違いな程の綺麗な肘掛け付の椅子があった。きっと校長先生が使うはずの椅子。
よく見れば傷や使い古した形跡はあった。多分いらなくなったのがここに収められたのだろう。
青山はその椅子に座ると、くるくると椅子を回して機嫌が良さそうだった。
白鳥の暇潰しの教室が音楽室なら、青山のその教室はここなのだと知った。この様子から、一年のくせに結構サボり慣れていた。
「あのさ、聞きたい事があるんだけど…いいかな?」
「うん、何?」
白鳥は手近な椅子の埃を払いながら引き寄せて、青山の隣りに腰掛けた。
「別れたってのは、雨宮から直接聞いた?」
「そうだけど」
青山は椅子を回すのを止めて白鳥を見た。その表情は至極に嬉しそうだった。
白鳥はそれとは逆に頭を抱えた。
きっと雨宮は自暴自棄になっている。稲村とはきっとまだ別れていないハズだから。きっと青山を稲村への見せつけに使う気だ。
「そ、そうだった!先輩、私苛められてるんです!!」
青山は前のめりになって白鳥の腕を掴みながらそう叫んだ。
「…何いきなり。M宣言?」
「…ちがっ、誰のせいだと思ってんの!」
「え、僕のせい?」
そう問い掛けると青山は大きく頷く。白鳥はちらりと青山の上履きを見ると、職員専用の赤いスリッパを履いていた。
さすがに苛々してきた。
もちろん青山の事だけじゃない、雨宮と稲村にも。確かに元凶は自分にあるけど、そこまでされると気分は良くない。
白鳥を巻き込んで大きくなった渦は動き出しているのにやっと気が付いた。
それをひとつずつ止めて行こうと白鳥は決めた。まずは青山の苛め、否嫌がらせを阻止すべく白鳥は青山の腕を掴んで、一年D組へ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!