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一年D組では、青山がいない事に皆が知っていた。誰に会うかというのは、もう知れ渡っている様な口振りで、女子達は話ている。
「あたしィ、入学ン時からアイツ嫌いだったんよぉ~」
「え、ウソ?私も嫌いだったぁ、偶然~!キャハハ」
「白鳥先輩に近付くなんてマジでウザくね?」
そう話しに花を咲かせていた女子達は「うちもー」と何人も言い仲間意識を高めていた。
「いつか変な事すると思ってたんだよね、青山ってさぁ。やっぱりハブにして正解~みたいなねぇ」
「ウケる~」
その声は教室中に響き、廊下にさえ届いていた。それをD組の前に立っている白鳥と青山にも、当然のように。
白鳥は青山に視線を向けた。
「可哀想、だなんて思わないで。」
白鳥の視線に気付いたのか、そう小さく呟いた。青山は自分の非難を言われているが大して気にしていない、むしろ全てを許しているように、教室の扉を見つめていた。
「私は馴れ合うのが嫌いなの。気持ちのない、只の浅く広くなんて嫌だから…。」
そう言い終えると手の平をぎゅっと強く握ったのに、白鳥は気付いた。依然、二人の手は繋がったままだったから。
「青山のその性格、気に入った!助けてあげるよ」白鳥はそう言うと青山の手を引き教室の扉を開けた。
教室の中にいた生徒の視線が一斉に自分に降り注いだのは痛い程感じた。
さっきまで楽しそうに青山の陰口を叩いていた女子達は、口を噤む。
ただ唖然と、急に入ってきた二人を見つめていた。
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