松本晴菜

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その日の放課後に白鳥が私の所に来た。 英語で分からない所があるからと言っていたが、その口許に浮かぶ笑顔から、何を考えているか分からなかった。 白鳥は隣りの先生の椅子をコロコロと転がして側に寄って来た。 私は敢えて相談に乗った。 「ココがこうだから、be動詞を変えて…ホラ、出来た!」 「あはっ、ホントだぁ」 そう両手を合わせて笑顔で頷いたのを横目で見ながら、ふふっと微笑んだ。 それを白鳥は見逃さなかった。 「ねぇ、先生。ココも分かんないんだ。」 そう言うと、白鳥は英語の教科書を掲げて顔の距離を近付けた。 「な…何してるの?」 「先生、彼氏いる?」 表情は変えず白鳥は淡々と述べる。 周りにはまだ教師がいるというのに、肩を寄せて来た白鳥に松本は焦り始めた。 「いないわよ…ホラ、学校忙しいじゃない?なかなか出会いなくてねー」 「…じゃあ、僕と付き合おっか?」 「はぁっ?!」 驚いて白鳥から体を離すとそう叫んでしまった。すると周りの教師が「何かありました?」と問い掛けてきたから、「なっ何も、ナイっですよ」と首を振った。 「あははっ…かーわいい」 私の行動を眺めていた白鳥はそう呟いた。すると教科書とペンをまとめ始め、鞄にしまいこんだ。 椅子を元の場所に戻すと、「またね」と職員室から出て行く。 置いて行かれた私は、ただ唖然と白鳥君の背中を見つめるしかなかった。
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