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二限目終了の鐘が鳴る。一年D組の英語の授業は、松本の終了の挨拶で終わった。いつもは生徒のざわめきで消される松本の声は、初めて教室中に響いた気がした。 松本が教科書や辞典、筆記具をしまっていると青山が駆け寄った。 「先生、お話があるのですが…お時間の方は宜しいでしょうか?」 「ええ、いいわ。」 松本と青山は二人揃って教室から出て、本館に向かっていた。渡り廊下を歩いているときに、松本が口を開いた。 「私に何の用?あまり変な事は答えれないわよ。」 その言葉に青山の視線が泳いだのに松本は気付いた。松本の思った通り、青山は白鳥の事を聞きたいようだ。 「あ―…すみません。ホントに下らない事なんですが…白鳥先輩をどうにかしてください!!」 青山は思い切り体を折り曲げると頭を下げた。それを松本は冷たい視線で見つめる。 「下らない…ですって?」 「…え?」 青山は頭を上げて聞き返した。松本の声色は明らかに怒りが込み上げていた。 「あなたにとっては下らないでしょうね!!…何よ、それはあなたの自慢かしら?」 青山は数歩下がった。松本の形相があまりにも険しく、恐怖さえ抱くほどで。松本が自分に寄り詰めるのが僅かに感じられるしか、青山は思考が止まりそうだった。 「私はただの遊びのあなたとは違って…本気だわ!」 「それは…白鳥先輩が勝手に―」 「ええ、彼の勝手でしょうね。…いい?もう私に話し掛けないで――二度とよ、二度と。」 松本は人指し指をつきだし青山に向けた。その指を目に指さんとばかりに近づけて松本は怒鳴り続ける。 言い終えたかと思えばすぐに背を向けて、職員室のある本館へ早足で向かっていった。 青山は一人残されその場に立ったまま、松本が通った渡り廊下を見つめた。 「……女って怖いわ」 「何言ってんだ、ばぁか。お前も女でしょうに。」 ふと声が耳に届いた。青山は驚いて辺りを見渡すと、二階と三階の階段の踊り場の窓から半身乗り出した白鳥を見付けた。その階段は音楽室に向かうために必ず通る階段。 松本は白鳥が二限目をサボったのが分かった。 「青山、音楽室に来な。慰めてやるよ。」 そう言うと白鳥は悪戯な笑みを浮かべたまま、窓からいなくなった。 青山は少し迷ったが、音楽室に向かうため別館に入った。
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