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青山は音楽室に続く階段を速足に上り、目的地を目指した。軽い息切れと動悸が襲う。 あまり体力に自信のない青山は、この程度で目眩がするほどに体は弱い方だった。ただそれを話すのが面倒で、高校の同級生で知っている人は少ない。 話しても、ただ哀れな目で見てくる…それが嫌いだった。体育は、それなりに運動神経は悪くないから、体力の少なさなどを知られる前に、それを凌駕させるほどのプレーをしてきた。 プライドとかポリシーとかそんなのじゃなくて。 『あの子は私より下で、劣っているんだよ。だから、手加減しないと――ね』 昔、私のいないところで話していた親友を思い出した。 信じていたのに…ずっと私を下等扱いしていたと知ると、親友は親友ではなくなった。 今、細い細い頼みの綱だった松本先生に見離されて、久しぶりに胸が痛んだ。 昔みたいな、あの感覚。 裏切られた、感覚。 私が音楽室に向かっているのは、白鳥に全てを白紙にしてと懇願するためではなく、私を守るため。 他人に頼ったら、自分は自分でなくなる。『助け合い』なんて、親友の裏切りと共に捨てた。 だから私は一人。 今、私に片手を差し出している彼もまた、私を捨てるでしょう? 『遊びのあなたとは違って、私は本気だわ』 先生の言葉が痛かった。 ただの体力不足とか、そんな類いじゃない。 左胸の奥が痛かった。
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