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白鳥は青山に回した手を離し、おもむろに立ち上がった。青山の左手を白鳥が右手で取って立たせようとする。
「おいで、青山…」
青山はその一言だけで胸が高鳴った。今さっき『友達』と言われたばかりなのに。
青山も立ち上がると、最後の階段を上り音楽室に向かった。
「そういえば初めて会った時、何でココに来たの?」
初めて会った時というのは、白鳥と松本先生がここで密会していた時の事。
波多高は音楽の授業は選択だから、ほとんど音楽室は使わない。吹奏楽部は冷暖房が効いた視聴覚室と第二音楽室を独占していたから。
きっと白鳥は、何故ここに青山が来たのか気になってたみたいだ。
「何でって…ピアノ弾くから、あたし」
「へぇ…弾けるんだ?」
そう言うと青山は白鳥の右手を振りほどくと、ピアノの前にある椅子に腰かけた。
ピアノの鍵盤に指を添えれば、軽やかに指を弾ませる。その鍵盤から奏でられる音はとても心地よくて、白鳥は自然に頬を緩ませていた。
「その曲知ってる、ショパンだ」
「へぇ…先輩、詳しいね」
青山は弾きながらそう返事をした。曲はまだまだ中盤に差し掛かる頃、青山の座っている椅子の横に白鳥は椅子を置いて腰掛けた。
すると白鳥も鍵盤に指を置き、青山と同じフレーズを奏でる。
「俺も弾けるから、ピアノ」
「あはは、すごい意外」
「意外は余計だっつの」
終盤になると曲調は静かに盛り上がってくる。白鳥と青山はクスクスと笑いながら、引き続けた。
「楽しそー」
どこからか声が聞こえた。
白鳥と青山は指を止めて音楽室の入り口を見つめた。
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