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はじめまして
「――はじめまして、だね、与くん」
驚いたけどそうして、ニカっと笑った彼女の笑顔は、この寒さにもかかわらず温かくて、大げさだけど太陽みたいに輝いて見えた。こんなに彼女は眩しい。
俺はその彼女にどう見えているんだろう、どう見えていたって、この先の長い未来に、その瞳に俺だけを写せる日が来ればいいなんて思う俺はきっとどうかしてるんだ。
これが恋だというなら、俺はこれからどうしたらいいのか、誰かに聞きたくてたまらなくなった。せっかく、抑えられそうになったあの衝動がまた襲ってきそうで、怖い。
「ふふふ、固まってるよ、与くん。大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ。驚いただけ」
「そっか、あ、本当にもう帰らなくちゃ」
彼女は白いコートのポケットから携帯を出して、時間を確認した。そして、じゃあ帰るねとまた笑って、少し歩いて離れ、振り返り手を振ろうとしたところで俺は待って、と声をかけた。
もし、これが彼女じゃなかったらきっとこのまま帰していただろうな、なんて呑気に考えながら。
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