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一年前
バイトはいつも0時までであの日は500円サイズのケーキが1箱残っていて、また人もほとんどいなくなりこれは自分で食うかと帰る準備をしていた時だった。自分と変わらない年齢ぐらいの女の子が唇を噛み締め涙を堪えている様子だったけど涙が溢れ、袖で拭いながら歩いていた。
その泣き方があまりにも綺麗で、急いで帰る準備をして、でもサンタの格好はしたままで手には最後の1箱を持ち彼女に近づいて声をかけたんだ。
『君にプレゼントをあげるよ』
『えっ…?』
そりゃ突然こんな格好したやつに話し掛けられたら驚くだろう。涙の跡をまた袖で拭いた彼女と俺の目が合って、サンタさん?と少し鼻声だけど綺麗な声が口から零れた。
その彼女にケーキの入った箱を渡すと戸惑った表情をして、俺はバイトしていてケーキが残ったことを説明した。すると彼女は
『ありがとう、サンタさん』
また大きな目から溢れた涙をゴシゴシと拭ってそう言って笑った。その笑った顔が忘れられなくて、そうきっとこれは恋。それからしばらくあの道を通って学校に通ったけど彼女にはあれ以降会わなかった。それから丸一年、もし去年と同じ日の今日、あの子にまた会えたら――
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