1000円

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1000円

    「――っ、離して!」 回想していると女の子の叫ぶ声がしてその声の方を向くと胸がありえないくらいドクンとした。 「もう、嫌よ、離して」 …嘘だ嘘だ嘘だ。だってこんなことって。ただの空似?もしくは幻覚?だってあそこで男に腕を掴まれ逃げようとしている女の子はまさにさっき思い浮かべた女の子で…ていうか喧嘩…?にしては男の方は強引に腕を掴み自分の方に引き寄せていた。それを掴まれていない方の腕で男の胸板を押し、拒んでいる 「あたしたちはもう終わったの、だから離してってば」 そしてあの日と同じように彼女は涙を浮かべ、ポロリと頬を滑り落ちた。…気付いたら俺の足は彼女たちの方に向いていて、あの日と同じ格好はサンタのままで、ただあの日と違うのは手に持った1000円サイズの箱。    
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