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胸の奥
「…バイト中だったんですよね?」
「……いや、これは俺、じゃない僕の使命です。子供たちに夢をですね、プレゼントを渡すという」
「っあはは、わかりましたわかりました」
自爆。彼女にとって本物のサンタでいたかったその気持ちはあかたも崩れ、むしろ大失敗に終わった。なんだか無駄に恥ずかしくなって、隣でくすくす笑う彼女をもっと見れなくなってしまった。
「でも、本当にありがとうございます」
「全然、いいですよ。バイト飽きてたところですし」
「あ、やっぱりバイト中だったんですね?」
「あ。」
そして彼女はまた口もとに手を添えてくすくすと笑った。や、やられた。でも、さっきまで泣いていた彼女とは違う表情が見れて嬉しい気持ちの方が上回って、今度はその可愛い笑顔から目が離せなくなった。
あの日と同じ、でも少し違った笑顔はやっぱり綺麗もあって可愛くもあって、どうしよう、胸の奥が、疼いた。
抱きしめたいなんて、思ったことを一所懸命に振り払った。
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