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「ん……お前は」
誰かがいることに気が付いたようだ。箱の中から出て京弥に近づいてくる。
「ここは一般人が入ってきてはいけないのだが?」
あからさまに疑いの視線をぶつけてくる。
「そうなのか?」
「そうなのだ」
そう言いながら顔を向ける少女。そこでようやく目の前にいる人物が誰なのか理解したようだ。
「お前は……昨日の男だな⁉ 何故ここに居る‼」
「いや、何故って言われても……」
「昨日の話では尋問の後留置所に送られたはず……まさか⁉ 脱獄‼」
「まてまてまてまて。まず人の話を聞こう」
ほっとくとそのまま警備兵を呼ばれそうだったので彼女を落ち着かせようとする京弥。
「ええっと……そう❗ 親戚‼」
「親戚? 誰のだ」
「ここの司令官のです」
「ウソをつくな‼」
「本当です⁉」
おもわず敬語になってしまう。
「とりあえず名前は?」
「藤之宮京弥だ」
「京弥だな」
そう呟くと彼女は壁に備え付けられた電話に手を伸ばすと、受話器を耳にあてどこかに連絡をとりはじめた。
「……急報告……が……司令……」
小声で話しているせいで京弥は断片的にしか聞こえてこない。
「やっと見つけたわよ」
反対側の方から知った声が耳にはいってきた。京弥が振り向くとそこには怜香が近づいてきている。
「どーしたんですか?」
そう尋ねると、怜香は着ていた白衣の胸ポケットから何かを取り出した。
「貴方にこの基地のIDカードを渡しにきたのよ」
「はぁ、どうも」
「ちなみに、貴方ここに来るときエレベーターを使わず階段を昇ったでしょ」
「な⁉」
「教えてあげる。この基地にあるエレベーターは全てIDカードを通さなきゃ動かないようなってるの」
「まさか‼」
ここでようやく、京弥は怜香に弄ばれていることに気づいた。
「……在ですか…………………いえ、では」
あちらもようやく終わったようだ。受話器を置き再び京弥に向き直ろうとして……驚いたようだ。
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