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『いいわよ、動かしてみなさい』
無線ごしに怜香の声が響く。自身の体を動かすように一歩を踏み出してみる。すると視線が上下に揺れ、機体が歩いたことを実感する。
『問題無いみたいね。自分の腕や脚をちょっと見てみなさい』
少し首を振り確認してみると、そこには生物的な肌色ではなく機械的な灰色の腕があった。脚も同様に変化していた。
「うおおお⁉」
まるで自分がロボットになったかのように錯覚する。そして今度はもっと激しく動きたくなった。
『しばらくテキトーにやってなさい』
『身体の異常を感じたら直ぐに機動を止めるんだぞ』どうでもよさげな怜香と身を案ずる九条。だが京弥の耳には届いていない。
「すっげえ‼」
機体を走らせ、跳ばせ、回転させる。まるで初めて外に出た子供のように動き回る。
見ていて呆れるほどのはしゃぎぶりだが、モニターごしにその動きを観察していた一人は驚愕し、一人は好奇の目をした。
「ありえない………私だって初めてのシュミレーターでは、走らせただけで吐いてしまったのに」
「…………それが普通なのよね。しかも軍事訓練も受けてない只の一般人なのに」
そんな二人の胸の内を知らずに京弥は生身の身体じゃできない機動を連発していた。
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