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長刀を振りかぶる赤い攻殻機。そのまま振り下ろせば眼前で構えをとる機体を両断することができるだろう。
避けるそぶり、迎撃する動きすら見せず、ただただ待ち構える撃墜目標。
数秒後には真っ二つになっているイメージが赤羽少尉の頭にくっきりと浮かんだ。
それほどまでに完璧な、斬撃。
だった。
一気に距離を詰め、長刀が最も威力を放つ間合いで腕を振る。
ようやく、左腕を動かし、頭の上で長刀を捌こうとする京弥機。
「その左腕ごと貰った❗」
肘関節のすぐ下の部分に特殊合金で造られた刃が食い込んだ。
そのまま振り下ろそうとした遥。
だが、京弥は左腕をいきなり捻りながら、外側に動かした。
「⁉」
左腕には長刀が半分程までめり込んでいたので一緒の方向に引っ張られてしまう。
突然の行動に機体はバランスを崩し、隙だらけの状態になる。
「ッ……どうせ武器は無いんだ❗ 慌てず体勢を立て直し……‼」
見えた。
灰色の機体は右手で手刀を作っている。
わかった。
狙いはこちらの胴体部、コックピット。
間に合わない。
一つの武器と化した右腕は吸い込まれるように紅い胸部装甲に当たり、コックピットごと貫いた。
『ハイ、そこまで』
直後、司令官の声がスピーカー越しに聞こえた。
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