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ロックされていたシュミレーターの扉が開く。
中で、
「オェェェェェエエェッ」
袋に向かって全力で吐いていた。
『…………』
ピッ
気まずくて再び扉を閉じる怜香。巫女斗も京弥のみっともない姿を目撃して些かがっかりしている。
部屋の中の空気がとてつもなく重い。
「どうしましょう? 大尉」
「う、うむ司令に聞いてみるんだ」
「ええ❗ 嫌ですよ。地雷踏みそうですし」
「私だってそうだ。……仕方ないな、赤羽揺少尉、命令だこの状況をなんとかしろ」
「うわ、汚ねぇ❗」
怜香に聞こえないように小声で押し付けあう軍人二人。結局は上官権限で皐月は逃げ、遥が尋ねるはめになった。
「…………ハァ」
上官を怨めしげに一度見て、意を決して怜香に話しかける。
「あの……さっきの少年は?」
「え、ええっと」
ちらりと巫女斗に視線を送る怜香。巫女斗が頷く。どうやら京弥は吐き終えたらしい。
呼吸を整え、何事も無かったかの様に振る舞う。
「出て来なさい」
再度シュミレーターが開かれる。
「アイツはね、藤之宮京弥。私の弟よ」
やっと紹介された京弥は、シュミレーターから一歩踏み出し、
「……………オェェ」
再びキタロウ袋のお世話になっていた。
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