22人が本棚に入れています
本棚に追加
「ええっと、キミ名前は?」
戸惑いながらといった感じで話し掛けるお姉さん。
「オ、オレ、キョウヤ、オトウト」
怜香を指差しながら、日本語を覚えたての外人さんのよう答える。
その言葉が納得できないのか目の前の女性の顔には疑いの色が浮かんでいる。
(これは……下手なこと口にできないかな)
何故かは知らないが彼女は京弥の言葉を信じてない。むしろ『弟』という単語が出た時から警戒心が高まったような気がする。
どうしようかと考えているとようやく、
「何やってるのよ、貴方達?」
怜香がこちらに反応した。
「ハッ、藤之宮司令。ご命令の資料と訓練生達の報告書をお持ちしました」
「はい、ご苦労様」
「……あの、俺は無視ですか?」
軽い疎外感を覚えてぽつりと呟く。
「そうでした。……彼は何者なのですか?」
「……弟よ」
「しかし‼」
「落ち着きなさいよ、カナメ。彼は私の弟なの、イイ」
カナメと呼ばれた女性士官は上官の命令ならばしかたがないと反論することは止めたが、疑問が無くなったのではない。
「しょうがないわね。京弥、しばらく外に出てなさい」
「え……なんで?」
「イイから行きなさい」
「……ハイ」
逆らって意味がないので黙って外に出る。
「カナメ。言いたい事があるんでしょ?階級なんて気にしないでイイわよ」
京弥の退出を確認すると、カナメが話易いように促す。
「では、お言葉に甘えて……怜香」
「……何よ」
「どうして、死んだはずの京弥君が此処にいるの?」
最初のコメントを投稿しよう!