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「さて最初だが、貴様が現在どの程度なのかを知りたい。だから先ずはこのグラウンドを止めるまで走り続けろ」
言われるままに走る京弥。彼自身の持久力は何もしていない一般人よりやや高いといったところだ。
なので5km程走った辺りで苦しくなり始めた。
Г……なるほど多少は動ける、といったところか」
静かに観察していたカナメは京弥の評価をし、今後どのように鍛え上げようかと頭を悩ませた。
(いつまで走らせるつもりなんだ?)
いい加減足が疲れてきた。最近これといって運動しなかった京弥にいきなりの長距離走はけっこうな無理がある。
Гよし、後一周回ったらこっちに来い」
ようやくカナメの声が聞こえ京弥は最後の半周になった辺りでラストスパートをかけ、カナメのもとへと急いだ。
「さて普通ならばこの後筋力トレーニングや格闘訓練といったものになるのだが……いかんせん貴様には時間が無いからな」
「はぁ……」
「戦争においてもっとも大切な『走る』事を集中的に鍛える」
「『走る』ですか?」
「そうだ。今も昔も戦場で生き残ることができるのはより長く走る者だ」
どんなに戦闘技術に長けていても動けなくなった者にあるのは死、それだけだ。相手よりも長く、遠く、速く戦場を駆けることができればそれだけ生き残る可能性は高くなる。
「これからの二週間は貴様を誰よりも長く足掻けるように鍛え上げてやる」
「…………」
真剣なカナメの言葉に押し黙ってしまう。自然と表情も引き締まる。悪くない空気だ。
「それでは今から『鬼ごっこ』を始める」
「なんじゃそりゃぁあああ!?」
沈黙は無理だった。
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