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2010年7月10日 御倉市
【MG】との戦争が始まってから10年の月日が経つ。日本の西側と北海道は奮闘虚しく奴らの領土となった。ここ御倉市は、多くある占領地の中で数少ない人類が奪還した土地だった。
そこに今、三つの人影らしき物がある。
しかし人ではない。
姿形は人だがソレは壊れた家屋をまたぎ越え、腕、肩、腰、膝、すべての間接から機械音を唸らせながら動いていた。
攻殻機----【MG】に対抗するために生み出した機械仕掛けの巨人。
全高およそ十メートルの巨人三体はどれも、力強く、敏捷そうなシルエットで、長い脚に、ぐっとしまった腰。大きめの肩に、たくましい両腕。装甲は直角で攻撃的。その頭部は、どこか生物的で鬼のように見える。人が使うのとそっくりな銃を手にもち、辺りを警戒しながら移動していた。
「目的地まで後500M」
三体の内の一機が他の機体に呼びかける。
数秒後、目的の場所に着いた彼等はそれぞれの手に持った武器を構える。
「ここなんだな、【歪み】が観測されたのは」
「間違いない。警戒をおこたるな」
「あっ」
「どうした⁉ 九条、【MG】か?」
「そうでは無いのですが……」
九条と呼ばれた女性は困惑気味な感じで報告を続ける。
「念のため索敵をしていたのですが、前方から人の反応が……」
「馬鹿な⁉ 普通の戦地ならいざしらず【MG】の元占領地だぞ!! ありえん」
「ですが、確かに人のモノです。どうします?」
「このご時世だ、保護しない訳にはいかんだろ。すぐに向かうぞ」
『了解』
反応があった場所には戦場跡地では見られない、破壊されてない家が一件あった。
不信感が募るばかりだった三人だが、九条は意を決して機体越しに声を出す。
『誰か居るのか? ここは危険地帯だ。なので、即刻に出て来て我々に同行しなさい』
言い終わってから数秒後、扉が開き中から少年が一人出てきた。
「近所迷惑だ!! 戦争ごっこは他所でしろ!」
出てきた少年は頭に三角巾、学生服の上からエプロン。脇には銀のボウルを抱え、反対側の手には泡立て器を持っていた。
『はぁぁぁぁ⁉』
そこにはこの状況を理解できる者など誰一人いなかた。
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